●過敏性腸症候群 通勤途中で下痢・腹痛…早めの診察必要です。
[産経新聞]
■ストレス社会反映 生活習慣改善も効果的
通勤電車の中で突然、便意や腹痛に襲われて真っ青に−。
ストレスを主な原因とした下痢や便秘、腹痛などに苦しむ人が増えている。
これらは「過敏性腸症候群」と呼ばれ、症状がひどい場合、仕事や勉強、
人間関係に支障をきたすこともある。
専門医は「軽く考えず、早めに診察を受けてほしい」と訴えている。(竹岡伸晃)
≪何度も下車≫
都内の会社員Aさん(36)は十代半ばから、試験や通学の際などに、
下痢、腹痛に悩まされてきた。
大学入学後、いったんは治まったが、就職後に再び悪化。
ひどい時期は、片道一時間強の通勤電車を
「毎日四−五回下車」して駅のトイレに駆け込む状態だった。
「一時、会社の近くに引っ越したのですが、それでも通勤には苦労しました。
頻繁に便意に襲われるため、近所のコンビニに行くことさえ大変な時期もありました」
Aさんは病気に関する情報を集めながら、胃腸科や神経内科などを受診。
試行錯誤の結果、
「出勤前に自宅では朝食を食べない」「始発電車に乗り、座る」など自分なりの対処法を見いだし、「三年ほど前から落ち着いてきた」という。
だが、現在も出張時などは、「トイレの場所が分からない」不安感から、腹痛や下痢に見舞われることが多く、「数日前から禁酒したり、食べる量を減らして備える必要がある」と話す。
≪4人に1人≫
腹痛や下痢、便秘などが続くにもかかわらず、検査では胃や腸に異常が見つからない…。
これが過敏性腸症候群(IBS)だ。
Aさんもこのケースだった。
平塚胃腸病院(東京都豊島区)の平塚秀雄理事長は
「ストレス社会を反映した現代病。国民の四人に一人が、IBSによる何らかの症状を持っていると推定されており、特殊な病気ではない」と説明する。
大腸は他の臓器と同様、自律神経によってコントロールされている。I
BSは、ストレスにより自律神経が乱れ、大腸の働きに影響が出ることで起こる
−と考えられている。
便は大腸で水分が吸収されて排泄(はいせつ)されるが、
「十分水分が吸収されないと下痢に、必要以上に水分が吸収され、出にくくなると便秘になる」(平塚さん)。
下痢や便秘といった「便通異常」のほか、
食欲不振や頭痛、おならなどの症状が見られる人もいる。
なりやすいのは、まじめできちょうめん、内向的、そして気弱なタイプ。
職場で責任が増し、ストレスにさらされる機会の多い「三十−四十代の男性の患者も増えている」(平塚さん)という。
≪売れる薬≫
「命にかかわる病気ではないが、生活の質が低下するため患者の悩みは大きい」
東急病院(大田区)の伊藤克人・心療内科医長はこう話す。
重症の場合、通勤、通学に苦労するだけでなく、会議や授業、試験にも集中できない。
こうした状態がさらにストレスとなり、「ますます症状が悪化し、無気力や集中力の低下など、抑鬱(よくうつ)状態になる人もいる」(伊藤さん)。
悪循環を断ち切るには、「たかが下痢や便秘」と考えず、早めに医師の診察を受けることだ。
窓口は消化器内科や胃腸科、心療内科などになる。
治療は、ストレスの存在を探り対処法をアドバイスする「心理療法」や、
症状を薬で改善する「薬物療法」などが中心。
生活リズムの乱れを正すことも効果的で、前出の平塚さんは「規則正しい食事や十分な睡眠、適度な運動など、生活や食事の内容を改善するだけでよくなる場合も多い」と話す。
慢性化したものでなければ、市販薬の利用も有効だ。
ライオンが昨年十二月に発売した「ストッパ下痢止め」は、「突然の下痢」に対応した薬。水なしで飲める便利さも受け、「予想を大幅に上回る売れ行き」(同社)となっている。
ただ、下痢や便秘の陰には、大腸がんや潰瘍(かいよう)性大腸炎、大腸ポリープなどの病気が潜んでいる可能性もある。
平塚さんは「IBS以外の病気を発見する意味からも、症状が続く場合には早めに診察を受けてほしい」とアドバイスしている。
≪過敏性腸症候群の診断基準≫
(1)腹痛や腹部の不快感が3カ月以上続く
(2)1日に5−6回以上、トイレに駆け込む
(3)便の状態は下痢、軟便、硬便、ウサギのふんのようなコロコロした便など
(4)排便により症状がやわらぐ
(5)大腸がんや潰瘍性大腸炎などの病気がない
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参考図書:
「過敏性腸症候群はここまで治る」
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